【藍染の先生にお話を聞いてみた】
さて、今回の日記帳は、今週末に控える藍染ワークショップのお話です。
イベントの詳細はこちらのページをご覧ください。
ワークショップの先生 おきしお ゆかりさんとお話をして、旅・手仕事・藍染との出会いとこれから… 色々なことをゆるっとお伺いしてみました。
面白いお話をたくさんして頂いたのでちょっぴり長くなってしまいましたが、ゆかりさん、そして藍染への興味がもりもりになる記事ができたので、ぜひ最後までお付き合いください!
とある日の午後、ひととまるにて。
<ものづくりへの気持ちが強くなった会社員時代>
-ゆかりさんは藍染を始めて2年目に入ったところとお伺いしました。
それまではどんなお仕事をされていたんですか?
ゆかりさん:3年ほど会社員をしていました。大学院でデザインを学んだこともあり、もともと自分の手で何かを生み出すことに興味はありましたが、その道での就活はうまくいかなかったんです。
-では、会社員をする中でやはりものづくりへの想いがあった?
そうですね… なんとなく「会社員は向いてないなあ」と思うことはありましたし、ものづくりをしたいという気持ちはだんだん強くなっていきました。ただ、会社を辞めるときは、次も同じように企業に転職しようかなと思っていましたね。辞めた当時は、次に働く先のことは決めずに辞めたんですけど。
-なるほど。そこからどういう風にものづくりを仕事にしていくことになったのでしょうか?
ちょうど会社を辞めるぐらいのタイミングで、地方に遊びにいく機会が何度かあったんです。
私が当時地方で出会った同世代の人たちは、例えば会社に雇用されていなかったり、自分の身ひとつで生きている、という人が多くて。
ちょうどそのタイミングで、知り合いがデザインをやってみたらと勧めてくれたのがきっかけでした。
あと、会社の外で出会った人たちは、なんでもやってみたらと後押ししてくれる人が多くて、自分も自分のやりたいことをやってみようと思えました。
-そうした出会いもあって、これからの働き方への考え方も変わっていった?
そうですね。
会社にいるときは所属するという働き方しか知らなったけど、働き方も暮らし方ももっと自由に選択できるんだと気づかされました。
会社を辞めること、辞めてからのことを考えようとしていたタイミングだったので、じゃあ私もそういう仕事や暮らしをしてみようという気持ちが大きくなっていきました。
<会社員を辞めてデザインの仕事へ>
-では、そこから本格的にフリーランスとして活動を始められたのでしょうか?
はい、最初はアルバイトをしながらデザインの仕事を受けていました。
デザインの仕事ってPCがあればどこでもできるんです。
なので、その頃から地方を転々としながら仕事をしていましたね。
-その頃から「旅する藍染屋」のスタイルが生まれ始めたんですね。
会社員を辞めてデザインの仕事を始めた当時の気持ちを聞かせてください。
自分のイメージを形にすることが楽しくて、夢中でした。
デザインの仕事はどこでもできるし自分のペースでできるし、自分にはこれが向いているなという気持ちが大きかったですね。特に最初の頃は「いいな」と思っていました。
-最初の頃は、だったんですね。
理想の働き方が叶ったように思うのですが、どこか違うなと思うことがあったのでしょうか?
うーん、なんというか、地方に滞在しながら仕事を、というお話をしたと思うんですが、いくら地方に行って面白い人たちと出会っても仕事のときはPCと向き合うだけになってしまうんですよね。
確かにデザインも何かを生み出すことに違いはないけど、その場にいる人とは何も一緒にできないというか…
せっかく色々な地域で色々な人やものと出会っても、仕事をするときの自分はPCに向かっているだけで、会社員時代と変わらないような気がし始めたんです。
<「リアルなものづくり」の探求と藍染との出会い>
-では、デザインの仕事と並行して、他のものづくりを探していたのでしょうか?
はい、デザインの仕事だけの期間は大体3年ぐらいで、その後でもっと「リアルなものづくり」を探す日々でした。
PCの画面上だけでなく、実際に手でものに触れて創り出していく手仕事を、とにかく色々とやってみる期間がありましたね。
-そこですぐに藍染に出会ったわけではないんですね。
例えばどんなことをやってみたんですか?
そうですね。糸掛け曼荼羅や銀細工、織物、畑仕事など…
色々な土地に滞在していたこともあって、まずは何かワークショップを見つけては参加して、という感じでした。
藍染も知り合いが開催したワークショップで初めて体験したんです。
-色々な手仕事を体験する中のひとつに藍染があったということですね。
藍染と出会ったときの気持ちを教えてください。
藍染は、たまたまワークショップの時間だけでなく、準備段階から近くで見たり体験することができたんです。
その工程のどれもに夢中になっている自分がいました。
そして実際に染める時もやっぱりこれ楽しい!となって、ビビビっときた感覚でしたね。
藍染は図柄や絞りを考えるなどデザインの要素もあり、今までの経験も活かせるなと思いました。
<藍染を知る旅に出る>
-そこでこれをやっていこう!と決められたわけですね。
ワークショップで初めて体験して、それを自分の仕事にしていく過程にとても興味があります。そこからどんな風に行動されたのでしょう?
はい、そこから数ヶ月後には、藍染のことを知るために奄美大島に飛びました。
先ほどのワークショップの主催者に、奄美大島で藍染を学んだという話を聞いて向かいましたね。
-行動力がすごい!奄美大島では何をして過ごしたんですか?
藍染工房に体験者として通いながら話を聞く毎日でした。
自分の持ち物だけでは染めの素材に限界があったので、SNSなどを通して知り合いから染める素材を募って染めては持ち主に送り返し… 練習を繰り返しながら1ヶ月ぐらい滞在しました。
-なるほど。まずは体験をしながら話を聞く、を繰り返していったんですね。奄美大島から次はどこへ?
本当はどこかの工房のスタッフになれればという気持ちもあったのですが、そう簡単にはいかなかったですね。
そこから藍染の本場である徳島へ行き、広島、丹波篠山へと移っていきました。
-渡り歩く中でも、奄美大島と同じような過ごし方を?
はい、徳島には本当にたくさんの藍染工房があったので、色々なところに行きながら話を聞いたりしていました。
徳島で初めて藍を建てて*みたんですが、うまく色が出ず失敗に終わってしまって…
徳島では原料を手に入れるのもやっとの思いだったので、これからどうしよう…とちょっとめげそうな時期でした。
※「藍を建てる」:水に溶けない藍を可溶化させ染色できる状態にすること、染液を作ることを言う。
-そこからどうやって気持ちを持ち直したんですか?
藍を建てるタイミングで揃えた道具一式があったので、車を買って荷物を積んで広島へ向かいました。
そこで訪ねた工房のひとつが女性がやっている工房で、今までは男性主体の場所が多かったので、その女性の藍とのふれあい方を見て希望が湧いたというか… もうちょっと頑張ろうと思えました。
-素敵な出会いがあったんですね。そんな中で藍を建てるのは成功した?
はい、諦めモードから抜け出せた出会いでした。
徳島での失敗から、藍を建てることに専念できる場所を探していました。
というのも、今までは1・2ヶ月のスパンで移動を繰り返していたので、じっくり色を出すために最低でも3ヶ月ぐらいは滞在できる場所が必要だなと考えたんです。
そこで丹波篠山にたまたま知り合いが空けている家があるよと声をかけてもらったので、篠山に移動して藍建てに再チャレンジすることにしました。
-ゆかりさんが繋いできたご縁があってこそですね。初めてうまく色が出たときはどんな気持ちでしたか?
実は篠山でも最初はうまく色がでなかったんです。
そんな中で、近所に草木染をやっている夫婦のお店があって、そこで話を聞いてもらったんです。
そのご夫婦にもらったアドバイスでもう一度やってみたら、初めて色が出ました。嬉しかったし、感動しましたね。
<藍染屋としての本格始動とこれから>
-そこから藍染屋としての活動が本格的に始まったわけですね。
はい、基本的に篠山に拠点を置きつつ、自分で建てた藍でワークショップを開催して過ごしていました。
それが昨年の夏ごろからです。
11月ぐらいからは寒さで藍の色が出なくなるので一旦お休みして旅に出たり…
今年の2・3月はメキシコに行ったりもしました。
-そして今に至るという感じですね。
ゆかりさんは「旅する藍染屋」として活動されていますが、そこにはどんな思いがあるのでしょう?
藍染に出会ってそこに旅をプラスしたというよりは、もともとの自分の生き方に藍染が加わったという感覚です。
藍をタンクに入れて移動し始めたのもまだまだ最近のことで、これからどうなっていくか、旅をすることが藍にどんな影響があるのかなど未知なことばかりですが、藍に興味がある人のところに自分が出向いていくというスタイルでしばらくはやっていきたいなと思っています。
-これから藍染と出会う方へ、メッセージをお願いします。
私は活動を通して藍染を広めたい、染めの文化を盛り上げたい!みたいなところに重きを置いていなくて、私が藍染と出会って楽しい!と思った時の気持ちをシンプルに一緒に味わってもらえたらいいなと思っています。
捨てるはずのものが染めによって生まれ変わってその人のお気に入りになっていく様子を見るのが、私もとても嬉しいです。
難しそう、手が出ない、というイメージを覆して、気軽にきっかけを提供できればいいなと思っています。
-2022年も半分が過ぎましたが、今年はどんな年になりそうですか?
ゆかりさん:昨年は初めて藍を建てることに成功したので、2022年は自分で藍を育てるところからやろうと動いています。
あとは、「旅する藍染屋」から「近所の藍染屋」になろうかなと思ったり… いろんな街に出没してはその町の染屋として活動して、また同じような季節に戻ってくる、みたいな。
移動はするけどその町の染屋として存在する、みたいなことができたらいいなと想像しています。
-では最後に、ひととまるの藍染のワークショップに参加される方、検討中の方にメッセージをお願いします!
ひととまるでのワークショップは、私にとっても2022年初めてのワークショップです。
初めてでも大丈夫です!気軽に手軽に藍染に触れる機会になればいいなと思います。
ぜひ一緒に楽しみましょう~!
とみもり